『前歯は見た目が一番気になる部分なので、インプラントで自然な仕上がりになるか不安です…』
『前歯のインプラントは難しいと言われて、治療を断られてしまいました…』
『前歯のインプラントをしたいのですが、歯ぐきの状態が悪いと言われて困っています』
当院にご来院される患者様から、このような前歯のインプラント治療に関するご相談を数多くいただいております。
確かに前歯のインプラント治療は、顎の骨の状態や歯周病の進行度合い、さらには審美性の問題まで、さまざまな要因を考慮しなければならない難しい治療です。そのため、治療を断念せざるを得ないケースもあります。しかし、適切な治療計画と高度な技術があれば、満足のいく治療結果を得ることができます。
そこでこのページでは、前歯のインプラント治療ができない主なケースや、治療を成功に導くためのポイントについて、インプラント治療を専門的に行う長崎県長与町の渡辺歯科医院、院長の渡邉が詳しく解説いたします。
前歯のインプラント治療をご検討中の患者様や、他院で治療を断られてお困りの患者様は、ぜひ最後までご覧ください。もちろん当院の無料カウンセリングにご来院いただき、直接ご質問をいただいても大丈夫ですよ。
目次
前歯インプラントの成功と審美性を担保する裏技:
抜歯即時インプラント

通常、インプラント治療をする際には、抜歯した箇所の傷が回復してからインプラントを埋入します。審美性に優れたインプラント治療にするためにピッタリなのが、抜歯即時インプラントです。
抜歯即時インプラントとは、抜歯したタイミングでインプラントを埋入する画期的な治療法です。抜歯をすると必ず抜歯したところの顎の骨と歯茎は少なくなってしまいます。
抜歯後の骨の吸収が進むと、歯ぐきが下がってしまい、審美的に問題が生じることがあります。
特に、前歯部は周囲の方から一番見られるところですので、歯ぐきの位置が下がってしまうと、見た目が気になってしまいます。
しかし、抜歯即時インプラントでは、抜歯と同時にインプラントを埋入することで骨の吸収を抑えることができます。それによって歯ぐきの位置を維持することができるため、より自然で美しい口元を保つことができます。
審美性に優れた点以外にも、抜歯したタイミングでインプラントを埋入するため治療期間が短いことや外科手術の回数が少なく済むため患者様の身体への負担が軽減されるメリットがあります。
ただし前歯のインプラント治療はとても難易度が高い治療になります。
なぜ前歯インプラントが難しいのか、以下で説明します。
前歯のインプラント治療が難しくなる主な要因

前歯のインプラント治療は、さまざまな要因によって難しい治療だと言われています。
その中でも特に前歯インプラントの難易度を高める要因は、『審美性を担保する必要がある』点です。
奥歯にインプラント治療を行う場合、インプラントが周囲の人の目に触れることはほとんどないため、審美性には特にこだわる必要がありません。そのため噛み合わせや清掃性といった、インプラントの機能性を重視した治療が可能です。
対して前歯部(特に上顎)にインプラント治療を行う場合は、お口を開けた際にはっきりと見える部分ですので、機能性だけでなく審美性も担保する必要があり非常に難易度が高くなります。
前歯1本だけのインプラントは審美性の担保が難しい
前歯1本だけのインプラントで審美性の担保が難しいのは、周囲の天然歯と調和させる必要があるためです。1本だけインプラント治療を行う際、周囲の天然歯との色合いが少し違うだけでも違和感となり不自然になることがあります。
前歯を失ってインプラントを選択するときに、求められるのは自然な見た目で審美性が優れているかがポイントです。歯だけではなく、歯ぐきの形や見え方一つでも自然に見えているか大きく影響しますので、細かい調整が必要な治療です。
具体的には以下のような治療が必要になるケースがあります。
①セラミック治療
前歯のインプラント治療を行う際にほんとにその歯だけが悪くて隣の歯が何もない健全な歯であれば問題ないですが、多くの場合前歯の1本のインプラント治療だけで終わることは少なく、大抵の場合は何らかの治療をされていることがほとんどです。
全体的なバランスをとるためにインプラント治療だけでなく、隣の歯もセラミックなどの審美性に優れた治療をすることで、見た目的にも天然の歯と同じような治療を行うことができます。
②ダイレクトボンディング
多種類のプラスチックを直接お口の中で盛りつけていき、天然歯のような自然な色や形を再現する治療法です。前歯インプラントの隣の歯に、古い詰め物などがされている場合、見た目の調和が難しく審美性が下がります。
セラミック治療までは必要ないような小さな詰め物などの場合には、ダイレクトボンディングによって自然な審美性を実現できます。
また、人が審美的だと感じるにはある程度それぞれの歯のバランス、比率というものが存在します。そこに近づけるためにもわずかながら削って詰め直したり、形態を整えるといった細かな治療技術が必要です。
③歯肉の移植治療
審美的な成功を得るためには、歯ぐきも重要な要素になります。
具体的に歯頸ラインといわれる「歯と歯ぐきの境目を結んだライン」が整っていないと、違和感のある歯ができてしまいます。
そうならないために下がってしまった歯ぐきを足していく、歯肉移植を行います。
よく行われるのは結合組織移植とよばれる治療です。
これは審美的な側面だけでなく、インプラントを長期にわたって安定させるためにも役に立つ方法です。
これらの治療に伴って前歯インプラントは費用が高額になりやすい
前歯のインプラント治療においては、審美性を担保するために上記のセラミック治療やダイレクトボンディング、歯肉移植などの治療が必要になることがあります。
美しい笑顔や明瞭な発音のために、前歯は重要な役割を担っています。そのためには歯科医師の高度な技術と豊富な経験が欠かせません。
前歯のインプラント治療は費用が高額になりやすいのは、治療費に加えてメンテナンス費用や骨造成などの追加費用が発生する可能性が高いからです。
しかし、安全かつ確実な治療を受けられた方が長期的な視点で考えると、快適な生活を送れることに繋がりますので費用に見合う価値があるといえるでしょう。
神経や血管の位置が近く技術的に治療が難しいケースもある
前歯部分の表面近くには神経や血管が通っている場所があります。
そこを誤って損傷したりしないように、インプラントの手術では事前の検査や計画が必要であるほか、インプラント手術前に骨を増やすなどをして安全に神経や血管からの離した場所にインプラントを埋入するなど、高度な技術が求められます。
前歯のインプラントができないと言われる主なケース

前歯のインプラントができないと言われる主なケースは、主に以下の2つです。
- 顎の骨が不足しているケース
- 歯周病が進行しているケース
具体的な内容は以下で詳しくご説明します。
①顎の骨が不足しているケース
インプラント治療では、人工歯を支えるための人工歯根(インプラント体)を顎の骨に埋め込まなければなりません。前歯の部分は他の部位と比較して骨の厚みが薄く、そのままの状態ではインプラントが抜け落ちたりしてしまうことがあります。
長期にわたってインプラントを安定させ、なおかつ正しい位置に埋めるためには骨を増やす治療が必要になる場合があります。
②歯周病が進行しているケース
歯周病で前歯がグラグラしている状態で放置していたり、炎症が起きているのに放置していたりすると、その部分の骨が薄くなり、高さがなくなっていきます。
上記に述べたようにインプラントを長期にわたって安定させるためには、十分な骨の量と歯ぐきが必要になってきます。
前歯に限らずインプラント治療が制限される健康状態

前歯に限らずインプラント治療が制限される健康状態は、主に以下の2点です。
- 糖尿病や骨粗しょう症など全身疾患による影響
- 喫煙習慣による影響
具体的な内容については、以下で詳しくご説明します。
①糖尿病や骨粗しょう症など全身疾患による影響
糖尿病、心疾患や脳血管疾患などがある方はインプラント治療を受けられないことがあります。
例えば、糖尿病を患っている場合では、血糖値のコントロールが不十分だと治癒が遅かったり、感染のリスクが高まる可能性があります。
また、インプラント治療後の歯周病のリスクも高いため、全身疾患のある方は、事前に相談し、十分な理解を得た上で治療に望みましょう。
②喫煙習慣による影響
まず、インプラント治療と喫煙は非常に相性が悪いです。
喫煙者の方は、インプラント治療が難しい可能性があります。インプラント治療では人工歯根と顎の骨を結合させる必要があり、そのためには血流が豊富でないといけません。
一方、喫煙によって発生する一酸化炭素は血流を悪くさせるだけではなく、タバコに含まれるニコチンも血管を収縮させます。そのため、人工歯根と顎の骨がしっかりと結合できなくなる可能性が高まります。
また、喫煙者の方は歯周病になりやすい傾向にあるため、インプラントの治療後も注意が必要です。
前歯のインプラント治療を成功させるポイント

前歯のインプラント治療を成功させるためには、以下が欠かせません。
- 審美性を長期的に維持するための管理
- 骨造成による骨の量の管理
- 歯肉移植による軟組織の管理
- 歯周病治療による口腔衛生の管理
- サージカルガイドを使用した精密な埋入の管理
それぞれ解説いたします。
①審美性を長期的に維持するための管理
審美性を長期的に維持するためには、以下の3点を徹底しましょう。
- 定期的なメンテナンス
- 歯肉退縮を防ぐための注意点
- 着色や変色への対策
具体的な内容については、以下で詳しくご説明します。
定期的なメンテナンス
インプラント手術後の歯磨きやフロスなどの口腔ケアを怠ると、感染や炎症が発生し、最悪の場合インプラントの失敗につながることがあります。
特に前歯は目立つ部位なので、歯ぐきの健康を保つために定期的なメンテナンスが重要です。
また、通常の歯みがきだけではなく、インプラント専用の歯ブラシやフロスを使って、インプラント周囲炎にならないようにしましょう。
歯肉退縮を防ぐための注意点
奥歯と比べて前歯の顎の骨は薄く痩せやすいため、インプラント治療後に歯ぐきが下がってしまう恐れがあります。
特に前歯の場合は、歯ぐきが下がることによってインプラントの結合部が露出し、審美性が欠けたり、歯ブラシで磨きづらくなることで清掃性が低くなったり、口腔内の衛生環境が悪化してしまいます。
着色や変色への対策
インプラントの人工歯やその周囲の歯ぐきが変色してしまうことは、患者様にとって大きな悩みです。
インプラントの上部構造である人工歯の素材によっては、飲み物や食べ物の色が着色し、変色したように見える場合があります。
本来の美しさを長く保つためには、定期的に歯科医院でクリーニングを受けることが欠かせません。
歯ブラシでは落としきれない歯垢や歯石を専門の器具で取り除くことで、色素の沈着を防ぎます。
②骨造成による骨の量の管理
そもそも抜歯に至る時点で、すでに歯を支える顎の骨にはなんらかの影響がでている可能性があります。
前歯であれば当然すぐに抜歯ということにはならずなんとかもたせて最後の最後で抜歯になってしまうということがほとんどではないでしょうか。
インプラントは骨の中に埋まっている必要があり、最低周囲に2ミリの骨の厚みが必要だといわれています。
そのために抜歯してインプラントになる際には、まずはインプラントをするのではなくしっかりとした土台となる骨をつくる、骨造成が必要になる場合があります。
これは大変高度な技術が必要になるだけでなく、患者様への身体的な負担もあります。
ただし、長期的な安定のためにはこの治療が必要な場面もあります。
③歯肉移植による軟組織の管理
インプラントが審美的で長期的な安定な状態を維持するために、骨はもちろんのこと歯ぐきの厚みも必要です。
歯ぐきもインプラントの周囲に2ミリは必要になってくる場合があります。
そのためには歯肉の厚みを増やす処置が必要になります。具体的には結合組織移植とよばれるもので、主に上顎の口蓋部(内側のところ)から結合組織を取ってきて、インプラント周囲に生着させます。
そうすることでインプラント周囲の歯肉に厚みができ、最終的に歯が入るときに審美的に仕上げることができます。
この方法も技術が必要な治療であり、また骨造成ほどではないですが患者様の身体的な負担もあります。
④歯周病治療による口腔衛生の管理
歯周病に罹患している患者様はインプラント治療を行う際にしっかりとした歯周病の管理が必要です。なぜならインプラント自体も天然歯同様に歯周病になってしまうからです。
インプラント治療を行う前に、歯周基本治療とよばれる基本的な治療を必ず行なう必要があります
また、インプラント治療が終わってからも必ず継続的なメインテナンスを行う必要があり、そうすることで長期的にインプラントを維持することができます。
⑤サージカルガイドを使用した精密な埋入の管理
前歯にインプラントを埋入する際にはほとんどのケースでサージカルガイドを使用します。
なぜなら、前歯は非常に審美性が重要になり、1ミリ単位での正確な埋入ポジションが求められるからです。
そのためにあらかじめシミュレーションした位置に正確にインプラントを埋入するためにサージカルガイドを用いて、3次元的な位置を決定していきます。この埋入位置でほとんどの場合成功が決まってしまう大事な局面になります。
上記で述べた骨造成や歯肉移植はこの正確な埋入を実現するために必要なのです。
ここまで、前歯のインプラント治療を成功させるポイントを5つご紹介しました。これらを実際に行える歯科医院は全国的にも限られており、満足のいく前歯のインプラント治療が受けられる患者様はまだまだ少ないのが実情です。
当院ではこれらの治療を全て行っておりますので、前歯のインプラント治療でお困りの方はぜひお問い合わせください。
前歯のインプラントができない場合の代替治療
診査、診断を進めていく中でどうしてもインプラント治療ができないと判断する場合もあります。
その際には代替治療を考えていく必要があります。
前歯を1本失った場合:ブリッジ治療
前歯を1本失った場合にはブリッジ治療を行うことがあります。抜歯した両隣の歯を削ってつないでいく治療であり一般的な方法ではありますが、周囲の歯に負担をかけたりより多くの歯を削る必要があります。
前歯を2本以上失った場合:部分入れ歯
前歯を2本以上失った場合は部分入れ歯になることがあります。
ブリッジ治療だとつなぐ部分が多くなり負担過重になってしますため、部分入れ歯のほうが良い場合があります。
しかし、前歯に部分入れ歯をおこなうと見た目が悪くなってしまったり、喋るときに違和感が強くなる場合があります。
まとめ:前歯のインプラントは抜歯前のお問い合わせが重要です

前歯のインプラント治療を行なう際には、審美的機能的に長期に維持していくためには様々な診査診断のもと精密な治療が求められます。
歯を抜いてしまうと必ず骨と歯ぐきは減ってしまいます。
失った組織をもとの状態までもどしていくためには、骨造成や歯肉移植などの処置が必要であり時間的にも費用面でも身体的にも負担がかかることがあります。
そうならないために抜歯をする前から診査診断を行ない、できる場合には抜歯即時インプラント治療をおこなうようにしています。抜歯即時インプラントを行なうことにより、骨の吸収を最小限に抑え歯ぐきのボリュームも維持することができ、短期間で審美的に治療を終えることができます。
当院の院長の渡邉は関西でのi6というインプラントの勉強会で講師をしており、抜歯即時インプラントのセミナーもスタッフの一員として若手の歯科医師に指導を行なっております。
日々日進月歩のこのインプラント治療に関しても、常に研鑽を行い、よりよい治療を提供できるよう努力しています。
また、抜歯ではなく抜歯を回避し歯を保存できる可能性も十分にあるため、前歯を抜歯しないと言われた患者様でお困りの方は、安易に抜歯やインプラントを行なうのではなく、抜歯を行う前になるべく早く相談をしてくださいね。
監修者情報

院長 渡邉 威文
- 九州大学歯学部 卒業
- 九州大学総合診療科にて研修
- 福岡赤十字病院にて研修
- 山口県萩市にて勤務
- 福岡県糸島市にて勤務
- 医療法人渡辺歯科医院 継承






