
目次
はじめに:入れ歯や被せ物が外れる不安、感じていませんか?
「右上の被せ物が外れてしまって…」
そうお電話くださったのは、50代の女性の患者様でした。
当院のホームページや口コミを見てくださり、なんと片道1時間半かけてご来院。
その丁寧な言葉づかいと、柔らかな笑顔がとても印象的な方でした。
この症例は、「奥歯の支えを失うとどうなるのか」「インプラントがなぜ“家の柱”のように大切なのか」を考えさせられる、心に残る治療の記録です。
被せ物が外れた理由──むし歯と咬合バランスの乱れ
初診時、右上の被せ物の下には深いむし歯(カリエス)がありました。
また、他の歯にも複数のむし歯が見られ、咬み合わせのバランスも不安定な状態。
歯ぐきの炎症も進んでおり、歯科的には「潜在的病的咬合(せんざいてきびょうてきこうごう)」──
つまり、まだ壊れてはいないものの、近い将来崩れてしまう可能性が高い段階でした。
「どこから治していいのか分からない」
そんな状態から、全体の初期治療を少しずつ進めていくことにしました。
丁寧な初期治療からスタート
まずは、カリエスの除去と歯ぐきの治療を中心に進めました。
患者様は毎回きちんと通院され、治療にもとても協力的。遠方にもかかわらず、ほとんどキャンセルすることなく通ってくださる姿に、こちらが逆に励まされることもしばしばありました。
「ここに来るの、ちょっとした小旅行みたいなんです」と笑われたことも。
その明るさが、治療を続けるモチベーションになっていたように思います。
咬合崩壊を防ぐためのキーポイントは「左下のブリッジ」
治療を進める中で、最も気になったのが左下のブリッジでした。
もともと左下6番を失っており、4・5・7番を支えにブリッジが作られていました。
しかし、その支台歯である7番が歯根破折を起こしており、抜歯が必要な状態に。
このままでは、左下6番・7番が欠損し、隣の5番までダメージを受ける危険性がありました。
私は心の中で思いました。
「ここが、この方のお口の未来を決める分岐点になる。」
インプラントの提案:「奥歯は家の支柱なんです」
カウンセリングでは、模型を手に説明しました。
○○さん、奥歯は“家の支柱”のようなものなんです。
1本の支柱がなくなると、家全体が少しずつ傾いてしまう。
だからこそ、支えとなる柱を建て直す必要があるんです。
患者様は静かに頷きながら聞いてくださいました。
家の支柱…分かりやすいですね。
たしかに、ここがなくなると不安定になりますね。
はい。この部分にインプラントを入れることで、支えを取り戻し、他の歯を守ることができます。
もともと保険診療を中心に考えておられた方でしたが、説明を重ねていくうちに、こう言われました。
これから先、後悔したくないので、先生を信じてお願いしたいです。
その一言が、今でも心に残っています。
インプラント手術当日:慎重に、確実に
手術当日は快晴。
局所麻酔を行い、感染対策を徹底した環境下で手術を行いました。
骨の状態を確認しながら、インプラント体を慎重に埋入。縫合を終え、レントゲンで位置と角度を確認したとき、「これでしっかり噛める支えができる」と確信しました。
術後、患者様は少し緊張の解けた表情でおっしゃいました。
思ったよりも痛くなかったです。安心しました。
骨との結合、そして通院の日々
その後の数か月、定期的に通院していただき、経過を観察しました。骨とインプラントが結合していく過程は、まるで“土台が固まっていく”ような感覚。
経過が安定してきた段階で、仮歯(プロビジョナル)を装着し、咬み合わせや力のバランスを確認しながら、少しずつ微調整を重ねました。遠方からの通院にもかかわらず、毎回笑顔で来院され、「先生、また来ましたよ」と冗談交じりに話される姿が印象的でした。
最終補綴セットの日──「家の支柱が戻った感じ」
手術から約9か月、全体の治療を含めて約2年。
いよいよ最終補綴物(かぶせ物)を装着する日がやってきました。
鏡を見ながらゆっくり噛んでいただくと、患者様がふっと微笑まれました。
なんだか安心しました。
あの“家の支柱”が戻った感じです。
その言葉を聞いた瞬間、胸が熱くなりました。
家の支柱──まさに、初診時にお話しした比喩の通りです。
あの日から積み重ねたすべての努力が、この一言に報われた気がしました。
経過は良好。今後のインプラントメンテナンスへ
現在、インプラント部位を含めた咬合は安定しており、残存歯も健康な状態を保っています。
ただし、インプラント治療は「終わってからが始まり」です。長く使うためには、定期的なメンテナンスとホームケアが欠かせません。「インプラントは自分の歯のように使えるけれど、歯周病と同じように“支える骨や歯ぐき”を守ることが大切です。」
患者様にもそうお伝えし、3か月ごとのチェックを続けています。「通うのにももう慣れました」と笑われたその声が、今でも診療室にやさしく響いています。
まとめ:歯を守ることは、“これからの人生を守ること”
今回の症例を通じて感じたのは、インプラントとは「歯を補う治療」ではなく、「これからの人生を守るための支えを作る治療」だということです。
1本の奥歯がしっかり支えてくれることで、噛める喜び、食事の楽しみ、笑顔──そのすべてが戻ってきます。
そして何より、信頼を寄せてくださった患者様の想いに応えること。
それこそが、歯科医師としての最大の喜びです。
長崎県長与町の渡辺歯科医院では、無料/有料相談(60分)を行っています。
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本記事は一般的な情報であり、効果・期間・費用は個人差があります。実際の治療は診断に基づきご提案します。詳細はカウンセリングでご相談ください。
監修者情報

院長 渡邉 威文
- 九州大学歯学部 卒業
- 九州大学総合診療科にて研修
- 福岡赤十字病院にて研修
- 山口県萩市にて勤務
- 福岡県糸島市にて勤務
- 医療法人渡辺歯科医院 継承







