患者様ストーリー

プロローグ

当院のブログをご覧いただき、ありがとうございます。

「歯科に通っているのに、なかなか良くならない」
「治療を繰り返すたびに、歯が減っていく」
――そんな経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか?

実際、当院にも同じようなお悩みを抱えて来院される患者様が多くいらっしゃいます。
場当たり的な治療を繰り返し、気づけば歯を失い、食事や会話に不自由を感じるようになってしまう。そんな負の連鎖を断ち切るため、私は卒業以来、数多くのセミナーに参加し、より良い治療法を追求してきました。

今回は、そんな当院にご相談に来られた、ある60代の女性患者様の実例をご紹介します。ご本人のご了承をいただき、内容を一部編集のうえ掲載しております。
この方の物語が、「噛めないことをあきらめかけていた」方々に、少しでも希望を届けられたら嬉しく思います。

出会いと背景

患者様が来院されたきっかけは、「左上の歯が動いて、食事がうまくできない」というご相談でした。

詳しくお話を伺うと、患者様は長年、ご両親の介護に追われていたそうです。

自分のことは後回しで、親の世話に明け暮れていました。気づいたら、歯がぐらついていて……

とお話しくださいました。

ご両親の介護は約4年間。ご自身の健康に向き合う余裕はなく、「歯の違和感があっても、つい我慢してしまった」と振り返られていました。

ようやく介護が一段落し、「今度は自分の人生を大事にしよう」と思えた矢先、鏡で見る自分の口元に衝撃を受けたといいます。「鏡を見るたびに、自分が老け込んだように見えてしまって……。正直、落ち込んでいました。」

それでも、「まずは奥歯でしっかり噛めるようになりたい。そして、できれば歯を整えて、もう一度自信を取り戻したい」という強い想いを持って、当院へ来院されました。

食事が苦痛に変わっていく日々

「好きなものを食べられないことが、こんなに辛いなんて思いませんでした」患者様はそう語りながら、静かに目を伏せられました。

初めは軽い違和感から始まった左上の歯のグラつき。やがて痛みを伴い、「噛もうとするたびにビリッと痛むようになった」とのこと。とはいえ、介護中は自分のことを優先できず、「多少の痛みくらいなら」と無理を続けていたそうです。

「歯が痛いときは、反対側で噛んだり、細かく切って流し込むようにしていました。」そんな生活が続くと、食事が“楽しみ”から“ストレス”へと変わってしまいます。「外食に誘われても、食べられるものが限られていて楽しめない。友人とのカフェも、“このパン、噛めるかな”と不安が先に立ってしまう」

ご家族との食卓でも、食べるペースが遅くなり、「先に食べてて」と遠慮してしまうように。「口元を隠して食べるクセがついて、人と向き合って食べるのが苦手になってしまいました」
次第に、“食事を楽しめない”ことが、自信の低下や人付き合いの減少にもつながっていったそうです。

診断と治療方針の決定

精密検査の結果、噛み合わせのズレや骨の吸収が進んでおり、多くの歯が保存困難な状態。部分的な治療では根本的な解決が難しく、最終的に「すべての歯を抜歯する必要がある」と診断しました。

「全部の歯を抜くなんて、考えたこともなかったです……」
大きなショックを受けられた患者様。私自身も心苦しく感じながらも、「抜くことがゴールではなく、“噛める口”を取り戻すためのスタートです」とお伝えしました。

治療計画としてご提案したのは:上顎は総義歯(総入れ歯)、下顎はインプラントを2本埋入し、それを支えにしたオーバーデンチャーインプラントでしっかりと入れ歯を固定することで、「外れにくく、噛める」「話しやすい」「見た目も自然」と、日常生活の質を大きく改善することができます。

「それなら安心ですね。もうズレるのを気にしなくて済むと思うとホッとします」治療内容をご理解いただき、表情が少しずつ明るくなっていくのを感じました。

恐怖と不安を乗り越えるために

治療方針が決まった後も、患者様の中には大きな不安が残っていました。
「正直…怖いんです。手術とか、痛みとか。どんなふうにするのかも、想像がつかなくて…」その言葉には、これまで歯の治療に時間を割けなかったことへの後悔や年齢的な不安、そして“何をされるか分からない”ことへの恐れが滲んでいました。

私たちはそのお気持ちを真摯に受け止め、ひとつひとつ丁寧にご説明を差し上げました。
「大丈夫ですよ。怖さを感じさせないように、準備も万全にしますね」
具体的には、インプラント手術や抜歯の際に、静脈内鎮静法(IV sedation)を用いることをご提案しました。これは、専任の麻酔科医が全身管理を行いながら、患者様をウトウトと眠ったような状態に誘導する方法です。

「寝てる間に終わるって…そんな方法があるんですね!」と、驚きつつも安堵された表情が印象的でした。手術のときに隣で担当してくださったのは、私の大学時代から信頼する麻酔科の先輩医師。

患者様の全身状態を管理しながら、スムーズで安全な環境で手術が行える体制を整えました。「知らん間に終わってました。本当に寝てただけみたいで…怖さが嘘のようでした」と、後日いただいたご感想。
このように、“安心して治療を受けられる環境をつくる”ことも、歯科医師として大切な責任だとあらためて感じました。

患者様の勇気にしっかり応えるために、私たちも全力でサポートしていく。不安を取り除きながら、次のステップへと進んでいく準備が整っていきました。

“歯がない期間ゼロ”を目指す、デジタル時代の治療計画

不安を乗り越え、いよいよ治療がスタート。
まず行ったのは、抜歯前に仮の義歯をあらかじめ完成させておくという準備です。
「えっ、先に入れ歯を作っておくんですか?」と、驚かれる方も多いのですが、当院ではこれを“当たり前”のように行っています。

その背景にあるのが、最新のデジタル技術です。従来のような粘土のような材料を使った型採りではなく、口腔内スキャナーを使って、精密な口腔データをとります。
「うぇっ…ってなるような型取りがないのは、本当に助かりました」患者様も、従来の歯型採取で苦しい経験をされたことがあったそうで、その快適さに驚かれていました。

このスキャンデータは、そのまま連携している技工士ラボへと送られます。熟練の技工士がデジタル上で補綴物(入れ歯)の設計を行い、事前に形を決定。そうして完成した仮の入れ歯を、抜歯と同時にその場で装着することで、 「歯が1本もない状態の期間」を限りなくゼロに近づけることができるのです。

「抜歯したその日に、もう歯が入ってるなんて思わなかったです。鏡を見たら、若返った気がしました」この第一歩は、患者様にとって“もう一度噛める口”への大きな希望につながります。

そして見た目だけでなく、「ちゃんと噛める」という感覚をすぐに取り戻せることで、 治療のモチベーションを最後まで保つことにもつながるのです。私たちが目指しているのは、不安のない、無駄のない、そして希望のある治療。
患者様にとっての“一番最初の噛めた実感”を、ここから一緒に築き上げていきました。

インプラント手術と、恐怖の克服

いよいよ、インプラント埋入の一次手術の日。この日も静脈内鎮静を用いて、リラックスした状態で臨んでいただきました。

「手術って聞くと、どうしても“怖いもの”って思ってしまいますけど…こんなふうに寝てる間に終わるなら、本当にありがたいです」

処置時間は約90分。麻酔科医と連携し、術中のバイタル管理も万全の体制で行いました。
インプラントは下顎に2本。サージカルガイドを使い、正確な位置と深さに埋入されました。術後も「えっ、もう終わったんですか?」という反応で、大きな腫れや痛みもなく、スムーズに回復されました。

そして数ヶ月後、インプラントと骨がしっかりと結合していることを確認し、次のステップとして二次手術(インプラントの頭出し)へ進みました。この工程も、同様に静脈内鎮静を使用。

「本当に私は怖がりで…。でも、ここまで来たら怖さよりも、“噛めるようになりたい”って気持ちが勝ちました」患者様ご自身の“変化”を感じる瞬間でもありました。
長年、治療を先延ばしにしてきた方が、少しずつ自信を取り戻していく。その過程をそばで見守らせていただけること。
それが、私たち医療者にとっても何よりの喜びなのです。

最終義歯の装着と“噛める喜び”の実感

インプラントと骨の結合が確認され、いよいよ最終的な義歯の装着の日。
この日は、患者様にとって“本当に噛めるようになる日”でもありました。下顎には、2本のインプラントにロケーターというアタッチメントを装着。このロケーターは、まるで“パチッ”とスナップボタンのようにはまり、入れ歯が外れにくく、しっかりと安定する構造になっています。

「うわ…すごい。カチッとはまる感じ、今までの入れ歯とは全然違う!」装着後、軽く咀嚼してもらうと、自然と笑みがこぼれました。
「ちゃんと噛めてる…!柔らかいお豆腐も、しっかり噛んで味がわかる」

これまで長く“飲み込むだけ”になっていた食事の感覚が、この瞬間から“味わう時間”へと変わっていったのです。上顎の総義歯も、下の安定したインプラントによって非常に安定した噛み合わせを実現できました。

「こんなに自然な見た目になるとは思っていませんでした」「鏡を見るのが楽しみになりました」患者様の表情は、初診時の緊張した面持ちとはまったく別人のように、柔らかく、明るく変化していきました。

食事の内容も一変したそうです。
「これまでは柔らかい物ばかり選んでいたけど、今は“何を食べようかな”って、食べる楽しみが戻ってきました」外食も再開し、久しぶりに会ったご友人から「表情が明るくなったね」と言われたという嬉しい報告もありました。

“しっかり噛める”ということは、ただ機能を取り戻すことだけでなく、人生そのものを前向きに変える力を持っている。そのことを、私たちもあらためて実感させていただく機会となりました。

“噛める”ということが与える影響

しっかり噛めるようになったことで、患者様の生活は大きく変わりました。食事の楽しみが戻っただけでなく、表情や会話、日常のちょっとした行動にも変化が現れたのです。

「おしゃべりするのも楽しくなりました。口を隠さなくても笑えるって、すごく気持ちがラクなんです」以前は食事中に痛みやズレを気にしていたため、人と食卓を囲むことに対してもどこか消極的だったそうです。今では、家族との会話も弾み、週末には近所の友人とランチに出かけるようになりました。

さらに、歯の見た目が整ったことで、鏡を見ることにも抵抗がなくなったとのこと。「気がついたら、メイクも少し丁寧になった気がします(笑)」と、冗談めかしながらも、うれしそうにお話しされていたのが印象的でした。

噛めること、話せること、笑えること。
どれも“歯”という小さなパーツがもたらす、大きな日常の幸せ。
そのすべてを取り戻せたことが、患者様にとって大きな自信と希望につながっていったのです。

この患者様の症例について

この記事の患者様が実際に受けられた治療については、以下のページで詳しくご紹介しています。

最後に

この患者様の治療を通して、私自身もたくさんの気づきをいただきました。
歯科医師としての使命は、歯を治すことだけではありません。
噛めるようにすることで、その人の「生活の質」や「人生そのもの」に関わっていく。
それは、責任であり、誇りでもあります。
今回の治療では、

治療への不安をどう取り除くか

デジタル技術をどう活用するか

限られた通院回数でどう最適化するか

など、患者様の背景や状況に応じた多くの工夫がありました。
でも一番大切だったのは、「もう一度、自分の歯で噛めるようになりたい」という患者様の想いでした。
これからも、同じように悩む方々のために。

「最後の治療にしたい」と思っていただけるような、丁寧で誠実な歯科治療を提供してまいります。
もし今、「歯のことで誰にも相談できずに悩んでいる」方がいらっしゃいましたら、どうか一度だけ、勇気を出してご相談にいらしてください。

あなたの「噛める未来」を、私たちと一緒に取り戻していきましょう。

監修者情報

院長 渡邉 威文

  • 九州大学歯学部 卒業
  • 九州大学総合診療科にて研修
  • 福岡赤十字病院にて研修
  • 山口県萩市にて勤務
  • 福岡県糸島市にて勤務
  • 医療法人渡辺歯科医院 継承
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