
「奥歯の6番を抜歯した後、そのままにしていても大丈夫ですか?」
「6番を抜いてしばらく経ちますが、今からでも治療できますか?」
「インプラントを考えていますが、できないと言われて困っています…」
当院にご来院される患者様からも、このようなご相談をいただくことは少なくありません。奥歯の6番(第一大臼歯)は「咬合の中心」とも呼ばれ、噛み合わせ全体を支える最も重要な歯です。抜歯後にそのまま放置してしまうと、咬合全体の崩壊につながってしまう恐れがあります。
このページでは、奥歯の6番を抜歯してそのままにするリスクや、インプラントができないと言われた場合の対処法、ブリッジ・入れ歯を含む治療の選択肢について、インプラント治療を専門的に行う長崎県長与町の渡辺歯科医院、院長の渡邉が詳しく解説いたします。
6番の抜歯後そのままにしてしまっている方や、奥歯のインプラント治療に不安をお持ちの方は、ぜひ最後までご覧ください。もちろん当院の無料カウンセリングにご来院いただき、直接ご相談いただくことも可能ですよ。
目次
奥歯の6番(第一大臼歯)とは?抜歯が必要になる原因
奥歯の「6番(第一大臼歯)」は、噛み合わせの中心となるとても重要な歯です。食事の際に食べ物をすりつぶす役割を担い、噛む力の多くを受け止めています。そのため歯科では「咬合の中心」とも呼ばれています。
6番は奥歯の中でも特に大きく、咀嚼の効率に大きく関わっています。実際に、奥歯で噛む力の60%以上をこの歯が担っているとも言われています。1本失うだけでも噛む力が大きく低下し、食事のしやすさだけでなく、歯並びや噛み合わせ全体に影響を与えることがあります。
しかし、虫歯や歯周病、歯の破折などの理由によって、やむを得ず抜歯が必要になるケースもあります。特に6番は噛む力が集中する歯であるため、他の歯よりもダメージを受けやすい特徴があります。
次の章では、この6番がどのような役割を持つ歯なのかについて、もう少し詳しく解説します。
6番(第一大臼歯)の役割と重要性

6番は「第一大臼歯」と呼ばれる歯で、一般的には6歳頃に生えてくることから「6歳臼歯」とも呼ばれています。
乳歯の奥に最初に生えてくる永久歯であり、その後に生える歯並びや噛み合わせの基準になる、とても重要な歯です。
この歯の主な役割は、食べ物をしっかりとすりつぶして消化を助けることです。奥歯の中でも特に大きく、噛む面積が広いため、咀嚼の中心的な働きを担っています。実際に、6番を1本失うだけでも噛む力が30〜40%程度低下すると言われており、食事のしやすさにも大きく影響します。
また、6番は上下の歯の噛み合わせの基準にもなる歯です。そのため、この歯を失ってしまうと噛み合わせのバランスが崩れ、周囲の歯に負担がかかることも少なくありません。
このように6番はお口全体の機能を支える大切な歯ですが、さまざまな理由によって抜歯が必要になるケースもあります。
30〜40代でも6番が抜歯になるケースとは
6番は本来、しっかりとケアを行っていれば長く残すことができる歯です。そのため、30〜40代で6番を抜歯するケースは決して多いわけではありません。しかし実際には、この年代でもやむを得ず抜歯が必要になる方が一定数いらっしゃいます。
その理由として多いのが、虫歯や歯周病の進行です。6番は噛む力が強くかかる歯であるため、虫歯が進行しやすかったり、治療を繰り返すことで歯が弱くなってしまうことがあります。また、噛み合わせの影響によって歯に過剰な力がかかり、歯が割れてしまうケースもあります。
特に奥歯は見えにくく磨き残しが起こりやすいこともあり、知らないうちに状態が悪化してしまうことも少なくありません。その結果、保存が難しくなり、抜歯を選択せざるを得ないことがあります。
重度の虫歯・歯周病による抜歯
6番の抜歯原因として最も多いのが、重度の虫歯や歯周病です。特に虫歯による抜歯では、奥歯の中でも6番が原因となるケースが多いと言われています。6番は噛む力が強くかかるうえ、歯の溝が深く複雑な形をしているため、汚れがたまりやすく虫歯が進行しやすい特徴があります。
虫歯が歯の神経まで進行すると、根管治療(歯の根の治療)が必要になります。治療自体は歯を残すための重要な処置ですが、何度も再治療を繰り返すことで歯質が少しずつ失われ、歯そのものが弱くなってしまうことがあります。その結果、歯が割れてしまったり、最終的に保存が難しくなる場合もあります。
また、歯周病が進行すると歯を支える骨が溶けてしまい、歯がぐらつくようになります。骨の吸収が大きく進んでしまった場合には、歯を残すことが難しくなり抜歯が必要になることもあります。
歯根破折・噛み合わせによるリスク
奥歯の6番は噛む力を最も強く受ける歯であるため、噛み合わせの影響によって歯に過剰な力がかかり、歯根破折(歯の根が割れてしまう状態)を起こすことがあります。特に神経を取った歯は天然の歯に比べて脆くなるため、強い力が加わると割れてしまうリスクが高くなります。
また、噛み合わせの特徴によっても6番への負担は変わります。例えば、奥歯に進むにつれて噛み合わせが狭くなるタイプの方では、奥歯に力が集中しやすく、歯に大きなストレスがかかることがあります。さらに、歯ぎしりや強い食いしばりの習慣がある方では、知らないうちに奥歯へ大きな負担がかかっている場合もあります。
このような噛み合わせの問題が重なることで、歯が欠けたり、歯根が割れてしまい、結果的に抜歯が必要になるケースも少なくありません。
奥歯(6番)を抜歯したまま放置するとどうなる?

奥歯の6番を抜歯したあと、「奥歯だから見えないし、そのままでも大丈夫では?」と考えてしまう方もいらっしゃいます。
しかし実際には、奥歯を失った状態を長期間放置することはおすすめできません。
歯は1本1本が独立して存在しているわけではなく、周囲の歯と支え合いながらバランスを保っています。そのため、1本の歯が抜けたままになると、周囲の歯が動いたり、噛み合わせのバランスが崩れたりすることがあります。
特に6番は噛み合わせの中心となる歯であり、この歯を失うと口の中のバランスが大きく変化する可能性があります。時間が経つほど歯並びや噛み合わせの乱れが進み、将来の治療が難しくなるケースも少なくありません。
ここからは、奥歯を抜歯したまま放置することで起こりやすい主なリスクについて解説します。
対合歯の挺出が生じる(反対側の歯が伸びてくる)

奥歯の6番を抜歯したまま放置すると、比較的早い段階で起こりやすい変化の一つが「対合歯の挺出(ていしゅつ)」です。これは、抜歯した歯と噛み合っていた反対側の歯が、徐々に抜けたスペースに向かって伸びてくる現象を指します。
歯は上下で噛み合うことで位置が安定しています。しかし片方の歯がなくなると、そのバランスが崩れ、噛み合う相手を失った歯が少しずつ移動してしまいます。特に奥歯ではこの変化が起こりやすく、患者様ご自身では気づかないうちに歯の高さが変わってしまうことも少なくありません。
この状態で問題になるのは、将来の治療が難しくなる可能性があることです。例えば、後からインプラント治療を行おうとしても、対合歯が伸びていることで十分なスペースが確保できず、そのままではインプラントを入れられないケースがあります。その場合、伸びてしまった歯を削る処置や、矯正治療によって歯の位置を調整する必要が出てくることもあります。
実際の臨床でも、奥歯を失ってから長期間経過している患者様では、この対合歯の挺出によってインプラント治療が複雑になるケースをよく見かけます。そのため、奥歯を抜歯した後は「しばらく様子を見る」と考えるのではなく、早い段階で将来の治療について相談しておくことが大切です。
隣接歯の傾斜・歯並びの崩れ
奥歯の6番を抜歯したまま放置すると、周囲の歯にも少しずつ変化が起こります。その代表的なものが「隣接歯の傾斜」です。歯は本来、隣り合う歯同士で支え合うように並んでいますが、1本失われるとそのバランスが崩れてしまいます。
6番を失うと、奥にある7番が手前に倒れるように傾き、反対に手前の5番が奥へ傾くことがあります。このような歯の移動はゆっくりと進むため、患者様ご自身では気づきにくいことも少なくありません。しかし歯が傾くと歯並びのバランスが崩れ、噛み合わせにも影響が出てきます。
さらに問題になるのが、歯と歯の間の隙間や段差ができることです。こうした部分には食べ物が詰まりやすくなり、虫歯や歯周病のリスクが高まります。食べ物が詰まりやすい状態が続くと、口臭の原因になることもあります。
このように、1本の歯を失うことは単に「その部分だけの問題」ではなく、周囲の歯並びやお口全体の環境に影響を与える可能性があります。
咬合の崩壊と全身への影響
奥歯の6番は、噛み合わせの中心となる非常に重要な歯です。そのため、この歯を失った状態を長期間放置してしまうと、噛み合わせ全体のバランスが崩れていく可能性があります。
6番がない状態になると、無意識のうちに反対側の歯で噛む「片側噛み」の習慣が生まれることがあります。この状態が続くと、噛み合わせの力のかかり方が偏り、顎の関節や周囲の筋肉に負担がかかりやすくなります。その結果、顎の痛みや口が開けにくいといった顎関節症の症状につながることもあります。
また、噛み合わせのバランスが崩れることで、頭痛や肩こり、首の違和感などにつながる場合もあると言われています。もちろんすべての方に起こるわけではありませんが、噛み合わせの乱れが体の不調に影響する可能性があることは、歯科でもよく知られています。
このように、奥歯の欠損を放置することは、単に歯が1本ないという問題だけではなく、お口全体の噛み合わせや体のバランスにも影響する可能性があるのです。
骨吸収の進行と将来の治療への影響
奥歯を抜歯したまま長期間放置すると、歯を支えていた顎の骨が少しずつ痩せていく「骨吸収」が起こります。歯が存在していると、噛む力が骨に伝わることで骨の量が保たれますが、歯がなくなるとその刺激がなくなり、骨は徐々に減少していきます。
この骨吸収は時間の経過とともに進行するため、抜歯後の期間が長いほど骨の量が不足しやすくなります。特に奥歯のインプラント治療では、しっかりと固定するために一定量の骨が必要になります。そのため骨が大きく減ってしまうと、そのままではインプラントを埋入できない場合があります。
骨量が不足している場合には、骨造成(骨を再生させる治療)が必要になることもありますが、治療期間が長くなったり、手術の範囲が大きくなる可能性もあります。
このような理由から、奥歯を失った場合にはできるだけ早い段階で歯科医院に相談し、将来の治療方法について検討することが大切です。
奥歯のインプラントが「できない」と言われる主な理由

奥歯のインプラント治療について相談した際に、「インプラントは難しいかもしれません」と説明を受けることがあります。
実際、奥歯のインプラントは前歯に比べて解剖学的な条件や噛む力の影響を受けやすく、いくつかの理由によって慎重な判断が必要になることがあります。
例えば、歯を失ってから時間が経っている場合には骨が痩せていることがあり、そのままではインプラントを固定するための土台が不足しているケースがあります。また、上顎の奥歯では上顎洞(サイナス)、下顎の奥歯では下歯槽神経といった重要な組織が近くにあるため、位置関係によっては安全性を考慮した治療計画が必要になります。
このほかにも、噛み合わせの状態や歯ぎしりの有無、全身の健康状態などが影響することもあります。
ただし、これらの理由は「絶対にインプラントができない」という意味ではないことも少なくありません。詳しい診断や治療方法については別の記事で解説しますが、まずは奥歯のインプラントが難しいと言われる主な理由について簡単にご紹介します。
①骨量・骨密度の不足
奥歯のインプラントが難しいと言われる理由として最も多いのが、顎の骨の量や骨密度が不足しているケースです。インプラントは顎の骨に人工の歯根を固定する治療のため、しっかりと支えるための骨の厚みや高さが必要になります。
特に歯周病が進行していた場合や、歯を失ってから長い期間が経過している場合には、骨吸収が進んでいることがあります。骨が痩せてしまうと、インプラントを安定して固定することが難しくなるため、そのままでは治療が難しいと判断されることがあります。
また奥歯は噛む力が強くかかる部分でもあるため、前歯よりも十分な骨量が求められる傾向があります。ただし、骨量が不足している場合でも、骨造成と呼ばれる骨を増やす治療によってインプラントが可能になるケースもあります。
②上顎洞(サイナス)との距離が近い
上顎の奥歯では、「上顎洞(じょうがくどう)」という空洞の存在がインプラント治療に影響することがあります。上顎洞は鼻の横あたりにある空洞で、上顎の奥歯のすぐ上に位置しています。
奥歯を抜歯した後は、時間の経過とともに骨が痩せていくだけでなく、この上顎洞が下の方向へ広がってくることがあります。その結果、インプラントを埋入するための骨の高さが十分に確保できない状態になることがあります。
このような場合、インプラントをそのまま入れてしまうと上顎洞に突き抜けてしまう可能性があるため、安全性を考慮して「難しい」と説明されることがあります。
ただし、骨の高さが不足している場合でも、上顎洞の骨を増やす「サイナスリフト」や「ソケットリフト」といった治療によって、インプラントが可能になるケースもあります。
>>上顎のインプラントが難しい理由の詳しい内容についてはこちら
③下歯槽神経への接触のリスク
下顎の奥歯では、「下歯槽神経(かしそうしんけい)」という重要な神経との距離が、インプラント治療の判断に影響することがあります。下歯槽神経は下顎の骨の中を通っており、下唇や顎の感覚に関わる神経です。
この神経に近い位置にインプラントを埋入してしまうと、神経に触れたり圧迫したりする可能性があります。その結果、唇や顎のしびれ、感覚の異常などが生じるリスクがあるため、慎重な診断が必要になります。
そのため、下顎の奥歯のインプラントでは、CT撮影によって骨の高さや神経の位置を正確に確認し、安全な位置にインプラントを埋入できるかどうかを事前に判断することが重要になります。このように、神経との距離が十分に確保できない場合には、治療計画を調整したり、別の治療方法を検討することがあります。
④噛み合わせの調整が難しい
奥歯は、お口の中でも特に強い噛む力がかかる部分です。一般的に、奥歯には60〜70kg程度の咬合力がかかると言われており、この力を長期間受け続けることになります。そのため、インプラントを安全に長く使っていくためには、噛み合わせのバランスを慎重に考える必要があります。
例えば、強い歯ぎしりや食いしばりの習慣がある方では、インプラントや周囲の歯に大きな負担がかかる可能性があります。また、噛み合わせのバランスが崩れている場合には、インプラントだけに過度な力が集中してしまうこともあります。
このような場合には、インプラントを入れる前に噛み合わせの調整を行ったり、治療後にナイトガード(マウスピース)を使用して歯やインプラントを守る対策を行うことがあります。奥歯のインプラントでは、単に歯を補うだけでなく、噛み合わせ全体のバランスを考えた治療計画が大切になります。
⑤全身疾患・開口量不足などその他の要因
インプラント治療の可否は、顎の骨の状態だけでなく、全身の健康状態やお口の機能によっても判断されることがあります。例えば、糖尿病や骨粗鬆症、心疾患などの全身疾患がある場合には、外科処置のリスクを考慮しながら慎重に治療計画を立てる必要があります。
また、意外と見落とされがちなのが「開口量(口の開き具合)」の問題です。奥歯のインプラント手術では、ドリルや器具を安全に操作するために、ある程度しっかり口を開けることが必要になります。しかし顎関節の問題や筋肉の緊張などによって口が大きく開かない場合、奥歯の一番奥まで器具が届きにくく、治療が難しくなることがあります。
特に女性や小柄な方では、もともとの顎の大きさや筋肉の状態によって開口量が限られているケースがあります。また、顎関節症の既往がある方や、長時間口を開けると痛みが出やすい方では、手術中の開口維持が難しくなることもあります。奥歯のインプラント手術では、口の奥までドリルや器具を安全に操作する必要があるため、開口量が限られている場合には治療の難易度が上がることがあります。
さらに奥歯の中でも6番や7番の位置は、口の一番奥に近いため、器具の角度や手術の視野の確保が重要になります。十分な開口量が確保できない場合には、器具の操作が制限されてしまい、インプラントの埋入位置や角度のコントロールが難しくなることがあります。そのため、奥歯のインプラント治療では骨の量だけでなく、口の開き具合や顎の動きも重要な診断ポイントになります。
当院では、CTによる骨の診断だけでなく、実際の開口量や顎の動き、顎関節の状態なども確認したうえで治療計画を立てています。必要に応じて手術の体勢や使用する器具を工夫し、できるだけ安全に治療が行える方法を検討します。このように、奥歯のインプラントでは骨の条件だけでなく、口の機能面まで含めた総合的な診断が大切になります。
奥歯のインプラントが難しい場合の当院の対処法

奥歯のインプラントについて相談した際に、「骨が足りないため難しい」「神経が近いのでできないかもしれません」と説明を受け、不安に感じた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、そう言われた場合でも、すぐに諦めてしまう必要はありません。
インプラント治療は、お口の状態や治療計画によって対応できる範囲が大きく変わることがあります。骨を増やす治療やインプラントの種類の選択、デジタル技術を用いた精密な治療計画などによって、治療が可能になるケースもあります。
当院にも「他院で難しいと言われたのですが相談できますか?」というご相談で来院される患者様がいらっしゃいます。もちろんすべてのケースで治療が可能とは限りませんが、まずは現在のお口の状態を正確に診断することが大切です。
ここでは、奥歯のインプラントが難しいと言われた場合に、当院で行っている主な対応方法についてご紹介します。
骨造成(サイナスリフト・ソケットリフト・GBR法)
奥歯のインプラントが難しいと言われる理由として多いのが、インプラントを支える顎の骨の量が不足しているケースです。このような場合に行われるのが「骨造成」と呼ばれる治療です。骨造成とは、骨補填材などを用いて骨を再生させ、インプラントを埋入するための土台を作る治療方法です。
例えば、上顎の奥歯で骨の高さが不足している場合には「サイナスリフト」や「ソケットリフト」と呼ばれる方法で上顎洞の骨を増やす治療を行うことがあります。
また、骨の幅や高さが足りない場合には「GBR法(骨誘導再生法)」という方法で骨を再生させることもあります。
このような骨造成を行うことで、骨量が不足しているケースでもインプラント治療が可能になる場合があります。患者様のお口の状態に応じて、適切な方法を選択していくことが重要です。
ショートインプラントの活用

奥歯のインプラント治療では、骨の高さが不足していることが原因で「インプラントは難しい」と説明されるケースがあります。従来はこのような場合、サイナスリフトなどの骨造成を行ってからインプラントを埋入する方法が一般的でした。しかし近年では「ショートインプラント」という選択肢も広がっています。
ショートインプラントとは、通常よりも長さの短いインプラントのことを指します。一般的なインプラントは8mm〜10mm程度の長さが使われることが多いですが、ショートインプラントでは6mm前後など、より短いインプラントを使用します。骨の高さが限られている場合でも、神経や上顎洞を避けながら埋入できる可能性があるため、骨造成を行わずに治療できるケースもあります。
特に奥歯では、上顎洞や下歯槽神経との距離が問題になることが多いため、ショートインプラントは有効な選択肢となる場合があります。治療の侵襲を抑えられる可能性があり、患者様の負担軽減につながることもあります。
もちろんすべての症例で適応できるわけではありませんが、骨の状態や噛み合わせを総合的に診断したうえで、ショートインプラントを含めたさまざまな選択肢を検討することが重要です。奥歯のインプラントが難しいと言われた場合でも、このような方法によって治療が可能になるケースもあります。
>>骨が少ない奥歯にショートインプラントを検討したケースはこちら
サージカルガイドを用いた精密なインプラント埋入
奥歯のインプラントでは、神経や上顎洞など重要な組織との距離が近いため、インプラントをどの位置・角度・深さで埋入するかを正確に計画することがとても重要になります。そのため当院では、CTによる三次元診断とデジタルシミュレーションを活用した治療計画を行っています。
CTデータをもとにインプラントの位置をコンピューター上でシミュレーションし、その計画通りに埋入するために「サージカルガイド」と呼ばれる装置を使用します。サージカルガイドを用いることで、事前に計画した位置にインプラントを正確に埋入しやすくなり、神経や血管を避けた安全性の高い治療につながります。
特に奥歯のインプラントでは、骨の量が限られていたり神経が近かったりすることも多いため、このような精密な治療計画が重要になります。
なお院長は、歯科医師向けインプラント勉強会「i6」において、インプラントシミュレーションやサージカルガイドに関する講義も担当しており、デジタル技術を活用したインプラント治療に力を入れています。
抜歯の仕方がインプラントの成否を左右する
インプラント治療というと「インプラントを埋入する手術」に注目が集まりがちですが、実はその前段階である「抜歯の仕方」も非常に重要です。どのように抜歯を行うかによって、その後の顎の骨の残り方が大きく変わり、将来のインプラント治療の難易度にも影響することがあります。
歯を抜いた後の顎の骨は、時間の経過とともに少しずつ吸収されて痩せていく傾向があります。しかし、抜歯の際に骨や歯ぐきをできるだけ傷つけないよう配慮した処置を行うことで、骨の吸収を最小限に抑えられる場合があります。こうした処置は、将来インプラント治療を行う際の大切な土台づくりにもつながります。
そのため、歯を抜く段階から「その後どのように治療を行うか」を考えておくことが重要です。インプラントを検討している場合には、抜歯の方法やその後の治療計画について、あらかじめ歯科医院で相談しておくことをおすすめします。

骨が減る前にインプラントを埋入する抜歯即時法
歯を抜いた後の顎の骨は、時間の経過とともに徐々に吸収されていきます。
そのため、骨が大きく減ってしまう前にインプラントを埋入する方法として「抜歯即時インプラント」という治療法があります。
これは、歯を抜いたその日にインプラントを埋入する方法です。
通常のインプラント治療では、抜歯後に数ヶ月ほど骨の治癒を待ってからインプラントを埋入することが多いですが、条件が整っている場合には抜歯と同時にインプラントを埋入することが可能なケースもあります。この方法では、抜歯後の骨吸収をある程度抑えられる可能性があり、治療期間の短縮につながることもあります。
ただし、すべての症例で適応できるわけではありません。歯周病の状態や骨の量、感染の有無などを慎重に診断したうえで、適応を判断する必要があります。
当院では、CTによる精密診断を行い、骨の状態や噛み合わせを総合的に確認したうえで、抜歯即時インプラントが適応可能かどうかを判断しています。条件が整っている場合には、このような方法によって治療を進めることもあります。
抜歯前にインプラントを見据えた相談をする重要性
奥歯の抜歯が必要と診断された場合、その時点で「抜いた後をどうするか」まで含めて治療計画を考えることがとても重要です。実際の臨床では、抜歯の段階でその後の治療を想定しているかどうかによって、顎の骨の残り方や将来のインプラント治療の難易度が変わることがあります。
例えば、抜歯時に骨をできるだけ傷つけない処置を行ったり、ソケットプリザベーションなどの方法で骨を守ることで、将来インプラントを行う際の条件が大きく改善することがあります。逆に、こうした配慮がないまま抜歯を行うと、骨吸収が進み、後からインプラントを行う際に骨造成などの追加治療が必要になるケースもあります。
そのため、抜歯が決まった段階でインプラントを含めた将来の治療について相談できる歯科医院を受診することが大切です。当院では、抜歯前の段階から将来のインプラント治療を見据えたご相談にも対応しています。
インプラント以外の治療の選択肢
奥歯を失った場合の治療法は、インプラントだけではありません。一般的には「ブリッジ」や「部分入れ歯」といった方法があり、患者様の年齢やお口の状態、治療へのご希望などによって選択肢が変わります。
それぞれの治療方法にはメリットとデメリットがあり、どの方法が最適かは患者様のお口の状況によって異なります。例えば、治療期間の短さを重視する場合や、外科処置を避けたい場合には、ブリッジや入れ歯が選択されることもあります。
一方で、周囲の歯への影響や長期的な噛み合わせの安定という観点から、インプラントが適しているケースも少なくありません。ここでは、奥歯を失った場合に選択される主な治療方法について、それぞれの特徴を簡単に解説します。そのうえで、インプラント治療がどのような点で優れているのかについてもご紹介していきます。
ブリッジのメリット・デメリット
ブリッジは、失った歯の両隣の歯を支えとして人工の歯を固定する治療方法です。固定式の装置のため取り外す必要がなく、比較的短期間で治療が完了することが多いのが特徴です。また、見た目も自然に仕上がることが多く、違和感が少ないというメリットもあります。
一方で、ブリッジでは支えとなる両隣の健康な歯を削る必要があります。また、支台となる歯に負担が集中しやすく、長期的にはその歯の寿命に影響する可能性もあります。そのため、お口全体の状態を考えたうえで治療方法を選択することが大切です。
7番を使ったブリッジのリスク
奥歯の6番を失った場合、7番と5番を支えにしてブリッジを作る治療が行われることがあります。しかし、特に奥歯のブリッジでは支台歯に大きな負担がかかることがあり、注意が必要です。
奥歯は噛む力が非常に強い部分であり、6番が担っていた咬合力を7番と5番の2本で支えることになります。その結果、支台歯に過剰な力が集中し、長期的には歯の破折や歯根破折につながるリスクが高くなることがあります。
実際の臨床でも、6番の欠損をブリッジで補った結果、支えとなっていた7番が割れてしまい、さらに奥歯の欠損が広がってしまうケースを見かけることがあります。このように、奥歯のブリッジは一時的には機能するものの、長期的には咬合のバランスが崩れてしまう可能性もあるため、慎重に検討することが大切です。
特に歯並びが乱れている状態でブリッジをしてしまうとブリッジに負担がきて、そのブリッジが悪くなることが多くあります。特に前後の歯が綺麗な状態で残っている天然歯であれば、ブリッジの選択は慎重に決めた方がいいと思います。
部分入れ歯のメリット・デメリット
部分入れ歯は、失った歯の部分を人工の歯で補う取り外し式の装置です。大きな特徴は、ブリッジのように周囲の歯を削る必要がないことです。また、比較的短期間で作製できるため、まずは入れ歯で様子を見ながら今後の治療方針を考えるという選択も可能です。
一方で、取り外し式であるため装着時の違和感を感じる方も少なくありません。また、噛む力は天然歯と比べると低くなることが多く、一般的には咀嚼能力は天然歯の30%程度と言われています。さらに、入れ歯は金属のバネを周囲の歯にかけて支える構造のため、その歯に負担がかかることもあります。
部分入れ歯には保険診療で作るものと、自費診療で作るものがあります。保険の入れ歯は費用を抑えられるメリットがありますが、装置の厚みや見た目などに制限があります。一方、自費の入れ歯では材料や設計の自由度が高く、装着感や見た目を改善できる場合もあります。
歯列矯正によるスペース閉鎖
奥歯を失った場合の治療法として、歯列矯正によって隣接する歯を移動させ、抜けたスペースを閉じる方法もあります。例えば、奥歯を前方へ移動させることで欠損部分を補うという考え方です。歯を新たに入れるのではなく、ご自身の歯を移動させて噛み合わせを回復させる治療方法と言えます。
ただし、奥歯の移動は前歯に比べて難しいことが多く、治療期間が長くなる傾向があります。また、歯の移動距離が大きくなるため、噛み合わせのバランスや歯の傾きなどを慎重にコントロールする必要があります。そのため、すべての症例に適応できるわけではなく、条件が限られる治療方法です。
このような理由から、奥歯の欠損に対しては矯正治療よりもインプラントや補綴治療が選択されるケースが多いのが一般的です。
当院が奥歯のインプラント治療をおすすめする理由

奥歯を失った場合の治療法には、ブリッジや部分入れ歯などさまざまな選択肢がありますが、当院では可能なケースではインプラント治療をおすすめすることが多くあります。
その理由の一つが、噛み合わせ(咬合)を長期的に安定させやすい点です。
奥歯の6番は「咬合の中心」とも呼ばれる重要な歯であり、この歯を失うと噛む力のバランスが大きく変化します。その状態を放置すると、周囲の歯に負担がかかり、歯並びや噛み合わせが崩れていくこともあります。
インプラントは顎の骨に固定されるため、失った歯の部分でしっかりと噛む力を支えることができます。その結果、周囲の歯への負担を軽減し、咬合全体の安定につながる可能性があります。
ここでは、当院が奥歯のインプラント治療をおすすめする主な理由についてご説明します。
咬合を守ることがインプラントの目的
インプラント治療というと、「失った歯を補う治療」と考えられることが多いですが、本来の目的はそれだけではありません。もう一つ大切な目的は「残っている歯を守ること」です。
奥歯の6番は、噛み合わせの中心となる非常に重要な歯です。この歯を失うと、噛む力のバランスが崩れ、周囲の歯に負担が集中するようになります。その結果、隣の歯が傾いたり、反対側の歯ばかりで噛むようになったりして、長い目で見ると咬合全体が崩れていく可能性があります。
インプラントは顎の骨に固定されるため、失った部分でしっかりと噛む力を支えることができます。6番を失った段階でインプラントによって咬合を支えておくことで、残っている歯への過度な負担を減らし、お口全体の噛み合わせを長期的に安定させることにつながります。
このような理由から当院では、奥歯の欠損に対して、咬合を守るという観点からインプラント治療をご提案することが多くあります。
骨吸収を防ぎ、顔貌への影響を最小限に
歯を失ったままの状態が続くと、顎の骨は少しずつ痩せていく傾向があります。これは、歯があるときには噛む力が骨に伝わり、その刺激によって骨の量が維持されているためです。歯がなくなるとこの刺激が減るため、時間の経過とともに骨吸収が進むことがあります。
インプラントは顎の骨に固定されるため、噛む力が骨に伝わりやすく、骨吸収を抑える効果が期待できるとされています。その結果、顎の骨の形が保たれやすくなる可能性があります。
顎の骨が大きく痩せてしまうと、口元のボリュームが減り、口元のシワや顔貌の変化につながることもあります。もちろん個人差はありますが、歯の欠損を放置せずに適切に治療することは、お口の機能だけでなく見た目の変化を抑えるという点でも大切です。
このような理由から、奥歯の欠損に対してインプラント治療を検討することには、さまざまなメリットがあります。
奥歯のインプラントに関するよくある質問

奥歯のインプラントについてご相談いただく際、患者様からはさまざまなご質問をいただきます。
特に多いのが、「どのくらいの期間放置していても治療できるのか」「費用はどれくらいかかるのか」「他院で難しいと言われた場合でも治療できるのか」といった内容です。
インプラント治療は、お口の状態や骨の量、噛み合わせなどによって治療方法や期間が変わるため、気になる点や不安を感じる方も多いかと思います。
ここでは、奥歯のインプラントについて患者様からよくいただく質問をいくつかご紹介し、それぞれについてわかりやすく解説していきます。
Q1. 6番を抜歯してそのままにしていますが、いつまでに治療すべきですか?
奥歯の6番を抜歯した場合、できるだけ早い段階で治療について相談することが望ましいとされています。一般的には、抜歯後3ヶ月以内に今後の治療方針を検討するのが一つの目安とされています。この時期であれば、骨の吸収が大きく進む前にインプラントなどの治療計画を立てやすい場合があります。
ただし、すでに数年放置してしまった場合でも、必ずしも治療ができないわけではありません。骨の状態や噛み合わせを詳しく診断することで、インプラント治療やその他の方法が可能になるケースもあります。
当院にも「奥歯を抜いてから長い期間そのままにしていた」という患者様がご相談に来られることがあります。まずは現在のお口の状態を確認することが大切ですので、気になる場合は一度歯科医院で相談されることをおすすめします。
Q2. 奥歯のインプラントは費用が高いですか?
インプラント治療は基本的に保険適用外の自由診療となるため、一般的には1本あたり30万〜50万円程度が目安とされています。費用にはインプラント体や上部構造(人工の歯)、手術費用などが含まれることが多く、歯科医院によって費用体系は異なります。
また、骨の量が不足している場合には、骨造成(サイナスリフトやGBRなど)が必要になることがあり、その場合は追加で10万〜50万円程度の費用がかかることがあります。
インプラントは初期費用が高く感じられることもありますが、周囲の歯への負担を抑えながら噛み合わせを回復できる治療法でもあります。そのため、長期的な視点で治療方法を検討することが大切です。
詳しい費用については、当院の治療費ページでもご案内していますので、こちらもご参考ください。
Q3. 他院でインプラントができないと言われましたが、セカンドオピニオンは可能ですか?
もちろん可能です。実際に当院でも、「他院でインプラントは難しいと言われたのですが相談できますか?」というご相談をいただくことがあります。
インプラント治療は、骨の量や神経との位置関係、噛み合わせなどによって治療の難易度が変わります。また、治療方法や使用するインプラント、診断方法によっても対応できる範囲が異なることがあります。そのため、歯科医院によって治療方針が変わるケースも少なくありません。
もちろんすべての症例でインプラントが可能とは限りませんが、骨造成やショートインプラントなどの方法によって対応できる場合もあります。まずは現在のお口の状態を正確に診断することが大切です。
当院ではインプラントに関するご相談やセカンドオピニオンにも対応しています。奥歯のインプラントについてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
Q4. 6番と7番の両方を失った場合はどうすればいいですか?
奥歯の6番と7番の両方を失ってしまった場合でも、インプラントによって噛み合わせを回復することが可能なケースがあります。代表的な治療方法としては、「インプラントを2本入れる方法」と「インプラントブリッジ」という方法があります。
インプラントを2本埋入する場合は、それぞれの歯を独立して補うことができるため、天然歯に近い噛み心地を得られる可能性があります。一方で、骨の状態や噛み合わせによっては、インプラントを2本ではなく1本埋入し、その上にブリッジ構造の人工歯を装着する方法が検討されることもあります。
どの方法が適しているかは、骨の量や噛み合わせ、周囲の歯の状態などによって変わります。そのため、CTなどによる精密な診断を行い、それぞれの患者様に合った治療方法を検討していくことが大切です。
まとめ:奥歯6番の放置は厳禁|素早い治療でお口の未来を守る
奥歯の6番は「咬合の中心」とも呼ばれる重要な歯であり、噛み合わせ全体を支える大きな役割を担っています。そのため、6番を抜歯したまま放置してしまうと、対合歯の挺出や隣接歯の傾き、噛み合わせの崩れなど、お口全体にさまざまな影響が出る可能性があります。
また、時間の経過とともに顎の骨が痩せてしまい、将来的にインプラント治療が難しくなるケースもあります。そのため、奥歯を失った場合には、できるだけ早い段階で今後の治療について検討することが大切です。
奥歯の治療にはインプラントだけでなく、ブリッジや部分入れ歯などいくつかの選択肢がありますが、噛み合わせを長期的に安定させるという観点から、インプラントが適しているケースも多くあります。
当院では、CTによる精密診断を行い、患者様のお口の状態に合わせた治療方法をご提案しています。奥歯の抜歯後の治療やインプラントについてお悩みの方は、長崎県長与町の渡辺歯科医院までお気軽にご相談ください。
監修者情報

院長 渡邉 威文
- 九州大学歯学部 卒業
- 九州大学総合診療科にて研修
- 福岡赤十字病院にて研修
- 山口県萩市にて勤務
- 福岡県糸島市にて勤務
- 医療法人渡辺歯科医院 継承






