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入れ歯が合わず、噛めない──その悩みは想像以上に深い
「入れ歯を入れようとするたびに吐き気がしてしまう」
「外食が怖くなり、人と食事をするのを避けている」
入れ歯が合わないという悩みは、単なる“口の問題”ではありません。
食べる喜び、自信、人付き合い――生活の質そのものを奪ってしまうことがあります。
今回ご相談くださったのは、64歳の男性。
主訴は「噛めない」「入れ歯が使えない」「インプラントができるのか知りたい」。
長い間、歯を失い続けてきた現実と向き合いながらも、
「もう一度噛めるようになりたい」という思いを胸に、当院を訪れました。
初診問診:長年の我慢と、言葉にならない苦しさ
診療室に入られた男性は、どこか申し訳なさそうな表情で椅子に腰掛けられました。
先生、もう何年もまともに噛めていません。
上の入れ歯は床が大きくて入れられないし、下も気持ち悪くて…。結局、何も使っていないんです。
お食事はどんなものを召し上がっていますか?
柔らかいものばかりです。肉も魚も噛めないから、豆腐とかおかゆばかり。
最近は体力も落ちてきて、食事が楽しくなくなりました。
お辛かったですね。入れ歯が合わない原因には、骨の形の変化や歯周病の進行など、いくつかの要素があります。今日は詳しく検査して、現状を確認しましょう。
患者さんは、これまで何軒もの歯科医院を回ったそうですが、
「骨が少ないからインプラントは無理」と言われ、あきらめていたとのことでした。
■検査診断:重度歯周病と咬合崩壊
レントゲンとCT撮影を行い、歯周病の進行状況を確認。
骨の吸収は著しく、特に下顎は支えとなる骨がほとんど残っていませんでした。
かなり進行した歯周病の影響で、歯を支える骨が大きく減っていますね。
上の歯は一部残せそうですが、下はすべて抜歯が必要な状態です。
やっぱりそうですか…。もう残せないんですね。
残念ながら、今の状態では噛む力を支えきれません。
ただ、“全部抜く=もう噛めない”ということではありません。
ここからどう立て直すかが大切です。
患者さんは深くうなずきながらも、どこか諦めたような表情でした。
■治療方針の提案:理想と現実のバランスを取る
理想を言えば、上下とも固定式のインプラントブリッジが最も安定します。
8〜10本のインプラントを使って、天然歯のように噛めるようになります。
それが一番いいんですね。でも…やっぱり費用が気になります。
そうですね。インプラント費用は本数に比例して高くなります。
しかし、もう少し現実的で効果的な方法があります。
それがインプラントオーバーデンチャーという選択です。
オーバーデンチャー?
数本のインプラントを埋めて、その上に入れ歯を安定させる方法です。
一般的な入れ歯よりもしっかり噛めるようになり、ズレにくくなります。
上は口蓋(うわあごの床)を抜いた設計にできるので、息苦しさも少ないですよ。
それなら、今のように“入れられない”ことは減りそうですね。
はい。いわば“インプラントに支えられた入れ歯”です。
固定式ほどの費用はかからず、しっかり噛めるようになります。
患者さんの表情が、ほんの少し明るくなりました。
“もう無理だと思っていたけれど、道がある”と感じられた瞬間でした。
■喫煙という最大のリスク
しかし、もう一つ見逃せない課題がありました。
○○さん、現在もタバコを吸われていますか?
はい。1日1箱は吸ってますね。
実は、喫煙はインプラントの最大のリスクなんです。
血流が悪くなって骨の再生が妨げられ、インプラントが骨にくっつかないことがあります。
歯周病の再発リスクも高くなります。
そんなに影響があるんですね。
はい。インプラントを長持ちさせるためには、禁煙が不可欠です。
ただ、これは強制ではなく“成功のための条件”です。
本気で噛めるようになりたいなら、ここが一番の分かれ道になります。
沈黙の後、患者さんが静かに口を開きました。
……わかりました。今まで歯を大事にしてこなかった自分ですが、今度こそ本気でやってみます。
その言葉が聞けてうれしいです。○○さんが本気なら、私も本気で治します。
この瞬間、診療室の空気が少し変わりました。
“患者と医師”という関係を超え、“同じ目標をもつ仲間”としての一歩が始まりました。
■治療計画:上下オーバーデンチャーによる再構築
CTデータをもとに、具体的な治療計画を立案しました。
上顎:4〜6本のインプラントを埋入し、口蓋を抜いたオーバーデンチャーで支える。
下顎:4本のインプラントで支えるオーバーデンチャー。
期間:約8〜10か月(骨の状態による個人差あり)。
この方法なら、インプラントの本数を抑えながらもしっかり噛めます。
上は口蓋を抜くので、違和感や吐き気が軽くなります。
それなら希望が持てますね。噛めるようになったら、何でも食べたいです。
はい。その日を目指して一緒に頑張りましょう。
途中経過でも不安なことがあれば、いつでも相談してください。
■心の変化:諦めから、希望へ
治療の説明が終わると、患者さんは小さく笑いました。
正直、ここまで悪くしてしまった自分を責めていました。
でも先生の話を聞いて、まだできることがあるって分かって、安心しました。
誰にでも“今から”できることがあります。
歯を失った経験も、これからの人生に活かせます。
初診の日、患者さんの表情は硬く、目線も下を向いていました。
しかし、帰り際にはまっすぐ前を見て、穏やかな笑みを浮かべていました。
その姿を見て、「この方はきっと変わる」と確信した瞬間でした。
■まとめ:本気の治療は、人生を変える
今回の症例は、
重度歯周病による咬合崩壊
入れ歯の違和感と機能不全
喫煙によるリスク
という複合的な問題を抱えていました。
それでも、患者さんが“本気で治したい”という覚悟を持ったことで、現実的で効果的な治療計画(インプラントオーバーデンチャー)を選択できました。歯を失ってしまった過去を悔やむのではなく、「これからどう生きるか」を考えることが大切です。
噛めるようになることは、食べる喜びだけでなく、笑顔、自信、そして健康を取り戻すことにつながります。
もしあなたも「入れ歯が合わない」「骨がなくてインプラントは無理だと言われた」と悩んでいるなら、
一度、しっかり検査を受けてみてください。思っている以上に、解決できる方法があります。
長崎県長与町の渡辺歯科医院では、無料/有料相談(60分)を行っています。
お電話/WEB予約からどうぞ。
本記事は一般的な情報であり、効果・期間・費用は個人差があります。実際の治療は診断に基づきご提案します。詳細はカウンセリングでご相談ください。
監修者情報

院長 渡邉 威文
- 九州大学歯学部 卒業
- 九州大学総合診療科にて研修
- 福岡赤十字病院にて研修
- 山口県萩市にて勤務
- 福岡県糸島市にて勤務
- 医療法人渡辺歯科医院 継承







