顎関節症とは?
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顎関節症とは何かご存じでしょうか。
顎関節症とは、顎に痛みを感じたり、口が開かなかったり、顎を動かすと音がするといった症状を伴う、顎の関節や顎の筋肉に炎症が起きることです。10代後半~30代という若年層に多く、一生のうちに半数の人が経験する病気であるとも言われています。原因はざまざまで、1つに特定することが難しく、いくつかの要因が重なっている場合が多いです。
顎関節症による症状
顎関節症になると、顎の関節やそれを動かしている筋肉に動きの制限と痛みが生じます。
下記のような症状も顎関節症が影響している可能性が高いものです。個人差が大きいことから原因が特定しにくいというのが特徴です。
その中でも代表的な症状が、顎が痛むといった顎関節痛・咀嚼筋痛、口が開かないといった開口障害、顎を動かすと音がするという顎関節雑音の3つです。顎が思い通りに動かず硬い食べものが噛めなかったり、痛みを感じるため大きいものが食べにくかったりなどの症状があります。
- 頭痛
- 首や肩の痛み
- 耳の痛み
- 耳鳴り
- めまい
- 味覚異常
- 目の疲れ
- 腰痛
顎関節症の原因
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冒頭でも記述している通りさまざまな原因が考えられますが、一番多いのが、上下の咬み合わせに異常がある場合です。
普段意識していないとき、私たちの上の歯と下の歯は接触していないことが普通とされています。上の歯と下の歯が接触する時間は1日の中で、会話や食事をする時間を合わせても約20分程度という報告があるほどです。
ところが、顎関節症の人は、上下の歯を持続的に接触させてしまう癖があり、筋肉が疲労してしまうのです。顎関節への負担が蓄積されると顎関節症に移行すると言われています。
例えば、猫背などでスマホやタブレットを見る行為や緊張を強いられたとき、上下の歯の摂食が長時間行われます。上下の歯を接触させる習慣を減らすだけで、症状が改善することがあります。 -
一般的な要因として考えられるもの
- ストレス
- 歯ぎしり
- 食いしばり
- 唇や頬の内側を噛む癖
- 頬杖
- 外傷
- スポーツ・演奏
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顎関節症の治療
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セルフケア
顎関節症は、セルフケアで改善できる場合もあります。
しかし、構造的なダメージが残ったり、痛みや違和感、開口障害が慢性化したりする可能性もあります。その場合は医療機関の受診をおすすめします。
セルフケアで重要なことは、顎関節症の原因である上下の歯の接触時間を減らすことです。咬み合わせが悪い状態を減らす方法は、まずは自分の咬み合わせが悪いということを認識することが大切です。
日常生活の中で、自分の癖について気づくことで、意識して歯の接触を中断できます。普段上下の歯を咬み合わせる習慣に気が付いたら、中断し、あえてぼーっと口を開ける時間をとります。
また、唇を閉じて歯を離すことを意識し、顔の筋肉の力を抜くことを意識します。顎を安静にするため硬い食べものは避けてヨーグルトのようなやわらかいものを選びましょう。口が開かないからといって無理をして口を大きく開けることも避けましょう。食べものは一口で食べられる大きさに切り、あくびをする際は、拳を顎の下にあて、あくびの力に逆らって軽く押し上げるようにしましょう。口を開きすぎることを抑え、筋肉や靱帯の伸びを軽減できます。
顎関節症の原因には頬杖をつくことや、うつ伏せで寝ること、歯ぎしりや食いしばりをすることもあります。そういった動作や習慣をなるべく避けることが、症状の改善や、悪化の防止・予防に繋がります。 -
理学療法
理学療法には物理療法と運動療法の2つがあります。
- 物理療法
- 手指による筋肉のマッサージ、低周波治療による筋肉への電気刺激、レーザー照射などがあります。
- 運動療法
- 筋肉や靱帯の柔軟性や伸張性を改善するストレッチや、開口訓練、筋肉増強訓練などを行います。
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薬学療法
痛みを抑えるとともに、ストレスの軽減や炎症のコントロールを行います。強い副作用のあるものもあるため、症状や心身の状態をみて、薬の種類を決めます。顎関節症の原因が多岐にわたるため、原因に見合った薬を処方します。
- マウスピース(スプリント療法)
リハビリ運動やマウスピースを用いて、噛み合わせの際に顎にかかる負担を軽減します。夜間寝ている時に使用し、日中は外します。顎関節症は、スプリント療法によりほとんどの患者様の症状が改善されると言われていますが、中には全く効かない場合もあります。
睡眠時無呼吸症候群との関わり
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睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に無呼吸を繰り返し、その結果日中の眠気など様々な症状を引き起こす疾患です。
医学的に10秒以上息が止まる状態を無呼吸といい、平均して、1時間に5回以上睡眠中に無呼吸が見られる場合に、この疾患であると診断されます。主な症状
- 大きないびき
- 日中の眠気
- 夜間多尿
- 不眠
- 夜間の窒息感
さらに、血液中の酸素が欠乏することによって、心臓、脳、血管に負担がかかり脳卒中や狭心症、心臓発作などの合併症を引き起こす原因にモなり得ます。その他にも、糖尿病や肥満、高血圧症などへの影響も確認されています。
チェックリスト
- いびきをかいて、時々呼吸が止まっていると言われたことがある
- 夜間、何回か目を覚ます
- 日中いつも眠たい
- 居眠りをしてはいけない場面で居眠りをしそうになる
- 朝目覚めたとき熟睡した感じがしない
- 目覚めたとき頭が痛い
- 肥満の傾向がある
- 集中力が落ちてきたと感じる
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治療方法
生活習慣の改善
ダイエットや飲酒の制限を行い、生活習慣の改善を目指します。また、睡眠薬を使用されている場合は、使用の中止や、薬の変更、減薬を検討します。
口腔内装置の使用
マウスピースで治療をする場合もあります。スリーププリントともいわれ、下顎を上顎よりも前方に出すように固定することで、上気道を広く保ち、いびきや無呼吸の発生を防ぐ方法です。
CPAP療法
寝ている間の無呼吸を防ぐため、気道に空気を送り続け、気道が塞がるのを防ぐというもの。鼻にマスクをつけ、そこから気道へと空気を送り込みます。睡眠中の無呼吸を防ぐために非常に有効な手段です。副作用はほとんどありませんが、のど・鼻の乾きやマスクの締め付けによる痛みが生じる場合があります。加温加湿器の使用や顔や鼻の大きさにあった装置を選ぶことで、快適な睡眠をとることができます。
スプリント
舌や下顎を前方に固定することで、気道スペースを確保します。比較的安価で携帯に便利なことが特徴です。