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「お子さんが食事のとき、前歯でうまく麺やお肉を噛み切れないようだ」「口を閉じたときに、上と下の前歯のあいだにすき間があいている気がする」——そんなふうに感じて、これは矯正が必要な歯並びなのだろうかと気になっている親御さんは少なくありません。奥歯はしっかり噛み合っているのに前歯だけが噛み合わない状態は、開咬(かいこう/オープンバイト)と呼ばれます。見た目の変化がはっきりしにくいため、健診で指摘されて初めて気づいたというご相談もよくいただきます。
開咬は、指しゃぶりや舌の癖など日常の習慣が関わっていることが多く、成長期のうちに背景から整えていくことで改善が期待できる場合があります。この記事では、開咬とはどういう状態なのか、なぜ起こるのか、どんな治療法があり、いつ相談すればよいのかを、長崎県長与町の渡辺歯科医院、院長の渡邉が解説いたします。当院では矯正の無料カウンセリングを行っておりますので、「これは開咬なのだろうか」という段階でも、どうぞお気軽にご相談ください。
開咬(オープンバイト)とはどんな歯並び?
開咬とは、奥歯で噛みしめたときに上下の前歯が接触せず、すき間があいたままになる噛み合わせのことをいいます。通常であれば、奥歯を噛み合わせたときに上の前歯が下の前歯に少し重なりますが、開咬ではその重なりがなく、前歯のあいだに空間が残ります。すき間の大きさは、わずかに触れない程度のものから、指が入るほど大きく開いているものまで幅があります。
出っ歯や受け口のように横顔の印象が大きく変わるわけではないため、ご家族が気づきにくい歯並びのひとつです。一方で、前歯が使えないぶん奥歯に噛む力が集中しやすく、食事の仕方や発音に影響が出ることがあるといわれています。まずは、ご家庭でどのように見分けられるのかを整理しておきましょう。
ご家庭での見分け方のポイント
確認の方法はとても簡単です。お子さんに「奥歯でしっかり噛んで」と伝えたうえで、唇を指で軽く広げて前歯の様子を見てください。奥歯が噛み合っているのに上下の前歯が触れていなければ、開咬の可能性があります。前歯だけでなく、犬歯(糸切り歯)の手前まで広くすき間が続いているケースもあります。
そのほか、次のような様子が見られる場合も、一度確認しておくとよいサインです。前歯で麺やサンドイッチを噛み切れず、いつも奥歯までもっていって食べている。食事に時間がかかる、あるいは丸のみするような食べ方になっている。安静にしているときに口が開いていて、舌の先が上下の前歯のあいだから見えている。「サ行」「タ行」の発音がはっきりしない。こうした特徴が重なるほど、噛み合わせと口まわりの癖の両方が関係している可能性が高くなる傾向があります。
乳歯のうちから見られることもあります
開咬は永久歯に生え変わってから目立つこともありますが、乳歯列の時期からすき間が見られることもあります。特に、指しゃぶりが長く続いているお子さんでは、指が当たる部分の前歯だけが噛み合わなくなり、左右非対称のすき間になることがあります。乳歯の時期に見つかった場合は、すぐに装置を使うというより、まず癖の背景を確認していくことが多くなります。
開咬があると起こりやすいこと
前歯が噛み合わないと、食べ物を噛み切るという前歯本来の役割が果たしにくくなります。そのぶん奥歯に負担が集中しやすく、長い目で見ると奥歯がすり減ったり、詰め物が欠けやすくなったりする傾向があるとされています。また、前歯のすき間から舌が出やすくなるため、発音がはっきりしないと感じられることもあります。
もうひとつ気をつけたいのが、口が開いた状態が続きやすい点です。口の中が乾きやすくなると、だ液による自浄作用が働きにくくなり、むし歯や歯ぐきの炎症のリスクが高まりやすいといわれています。ただし、こうした影響の出方には個人差がありますので、すき間があるからといって必ず不調が生じるわけではありません。実際にどの程度お子さんの生活に関わっているかは、診察のうえで一緒に確認していくことが大切です。
では、そもそも開咬はなぜ起こるのでしょうか。次の章で主な原因を見ていきます。
子どもの開咬はなぜ起こる?主な原因
開咬の背景には、日常的な癖によるものと、あごの形や成長のしかたによるものがあります。多くの場合はこれらが単独ではなく、いくつか重なって影響していると考えられています。原因によって、取り組むべきことも治療の進め方も変わってくるため、まずは「何が前歯を噛み合わなくさせているのか」を見極めることが出発点になります。
指しゃぶり・爪を噛む癖など
指しゃぶりは乳幼児期には自然な行動ですが、前歯が生えそろう時期を過ぎても続くと、指が当たり続けることで前歯が押し出され、すき間ができる方向に影響することがあります。同じように、爪を噛む、タオルや毛布の端を吸う、鉛筆を噛むといった癖も、力の加わり方によっては歯並びに影響する場合があります。
一般的には、永久歯の前歯が生え始める5〜6歳ごろまでに指しゃぶりが自然になくなっていくお子さんが多いとされています。この時期を過ぎても続いている場合は、叱ってやめさせようとするよりも、不安や眠気など癖の背景にある理由に目を向けながら、少しずつ回数を減らしていく関わり方がすすめられます。癖がやわらいだ段階で、歯並びが自然に改善してくるケースもあります。
舌の位置と使い方(舌突出癖)
開咬でとくに関わりが深いといわれているのが、舌の位置と動かし方です。本来、安静時の舌は上あごの天井部分に軽く触れているのが自然な状態とされています。ところが、舌が下がっていたり、飲み込むたびに舌先で前歯を押し出す動き(舌突出癖)があったりすると、前歯が外向きに押される力が繰り返し加わります。
この力は一回ごとは弱くても、飲み込む動作は一日に何百回も繰り返されるため、積み重なると歯の位置に影響しうると考えられています。装置で歯を並べても、この癖が残っていると元に戻りやすくなる傾向があるため、開咬の治療では舌の使い方への働きかけがとても重要な位置を占めます。
口呼吸と口まわりの筋肉のバランス
ふだんから口が開いている状態が続くと、唇が歯を内側に押さえる力と、舌が外に押す力のバランスが崩れやすくなります。唇が閉じにくいぶん前歯が前へ出やすくなり、開咬につながることがあるとされています。口呼吸は舌の位置の低下とも結びつきやすく、先ほどの舌の癖と互いに影響し合っていることも少なくありません。
鼻づまりが背景にあるケース
口呼吸の背景に、慢性的な鼻づまりやアレルギー性鼻炎、扁桃・アデノイドの肥大などが隠れていることがあります。鼻で呼吸しづらい状態が続いていると、口を閉じる練習だけではなかなか改善しません。この場合は、耳鼻咽喉科での診察を受けていただくことをおすすめすることがあります。当院では、必要に応じて医科との連携もご案内しながら、歯科でできることと医科にお願いしたほうがよいことを整理してお伝えするようにしています。
あごの成長のしかたによるもの
癖とは別に、あごの成長方向やかたちが関係している場合もあります。下あごが下方向に成長するタイプでは、前歯が噛み合いにくくなる傾向があるといわれています。こうした骨格的な要素が大きいケースでは、癖の改善だけで完全に解消するとは限らず、成長の経過を見ながら治療計画を立てていくことになります。
原因が整理できたところで、実際にどのような治療の選択肢があるのかを見ていきましょう。
子どもの開咬に対する治療の選択肢
開咬の治療は、「歯を動かすこと」と「歯を動かしたあと元に戻さないよう癖を整えること」の両輪で考えます。とくにお子さんの場合は、成長する力を利用できるという利点があるため、装置だけに頼らず口まわりの機能を整えるアプローチを組み合わせることが多くなります。ここでは当院で対応している主な方法をご紹介します。どの方法を選ぶかは、原因・年齢・生え変わりの段階・ご家庭で続けられる範囲などを踏まえ、お子さんとご家族のお考えを伺いながら一緒に決めていきます。
MFT(口腔筋機能療法)で舌と唇の使い方を整える
MFTは、舌・唇・頬の筋肉の使い方をトレーニングによって整えていく方法です。舌を正しい位置に置く練習、正しい飲み込み方の練習、唇をしっかり閉じる力をつける練習などを、年齢に合わせた内容で行います。開咬の背景に舌の癖がある場合、このトレーニングが治療の土台になります。
装置と違って毎日ご家庭で続けていただく必要があるため、ご家族の協力が欠かせません。とはいえ、一回数分程度の内容を習慣にしていくものですので、歯みがきの前後など決まったタイミングに組み込むと続けやすくなります。当院ではスタッフが練習の様子を確認しながら、無理なく続けられるペースをご提案しています。
取り外し式の装置(プレオルソ・床矯正)
プレオルソは、やわらかい素材でできたマウスピース型の装置を、日中の一定時間と就寝中に装着していただくものです。歯を強く動かすというより、口まわりの筋肉のバランスを整えながら歯列を導いていく考え方の装置で、比較的低年齢のお子さんから使いやすいという特徴があります。
床矯正(拡大床)は、取り外しのできる装置でゆっくりと歯列の幅を広げていく方法です。歯が並ぶスペースが足りないことが背景にある場合に検討します。いずれも取り外せることから食事や歯みがきがしやすい反面、装着時間を守れるかどうかが結果に影響しやすい方法でもあります。お子さん本人が納得して取り組めるかどうかを、事前によく確認するようにしています。
インビザラインファースト・ワイヤー矯正
永久歯が生えそろってきた段階で歯の位置をしっかり整えたい場合には、お子さん向けのマウスピース矯正であるインビザラインファーストや、ワイヤー矯正を用いることがあります。マウスピース型は透明で目立ちにくく、取り外して歯みがきができる点が利点ですが、一日の装着時間の目安を守ることが前提になります。
ワイヤー矯正は、装置が固定されているためご本人の装着管理に左右されにくく、細かな歯の移動に対応しやすい方法です。どちらにも向き・不向きがありますので、歯並びの状態とお子さんの生活スタイルの両面から、無理のない選択肢をご提案いたします。
装置のあとに大切なのは「戻さない工夫」
開咬は、装置で前歯を噛み合わせられても、舌で前歯を押す癖が残っていると再び開いてきやすい傾向があるといわれています。そのため、装置による治療とMFTを並行して行い、治療後も一定期間は保定装置(リテーナー)を使いながら経過を見ていくことが一般的です。「装置を外して終わり」ではなく、その後の期間も含めて計画を立てておくことが、結果を安定させるうえで大切になります。
開咬の相談・治療はいつ始めるとよい?
開咬の治療開始時期に、すべてのお子さんに当てはまる正解があるわけではありません。原因や成長段階によって適切なタイミングは変わります。ただし、相談そのものは早い時期にしておいて損はない、というのが実際のところです。
相談の目安は5〜7歳ごろ
前歯が乳歯から永久歯に生え変わり始める5〜7歳ごろは、噛み合わせの様子が確認しやすくなる時期です。この時期であれば、指しゃぶりや舌の癖といった背景に早めに気づくことができ、癖への働きかけだけで改善が期待できるケースもあります。あごの成長がまだ残っている段階なので、成長を活かした選択肢を検討しやすいという利点もあります。
もちろん、この時期に相談したからといって、すぐに装置を使うことになるとは限りません。「今は経過を見て、この時期にまた確認しましょう」というご提案になることも多くあります。早めに相談する価値は、治療をすぐ始めることではなく、いつ動くべきかの見通しを持てることにあります。
早めに相談したほうがよいサイン
次のような様子がある場合は、時期を待たずに一度ご相談いただくことをおすすめします。前歯のすき間が大きく、食事に明らかな不自由がある。5〜6歳を過ぎても指しゃぶりが続いている。安静時にいつも口が開いていて、鼻づまりが慢性的にある。発音のしづらさをお子さん本人やご家族が気にしている。学校の歯科健診で噛み合わせについて指摘を受けた。いずれも、背景に対応できる要因が隠れている可能性がある状況です。
中学生以降でも取り組めます
成長期を過ぎてしまったから手遅れ、ということはありません。あごの成長を利用した方法は使いにくくなりますが、歯を並べる矯正治療自体は年齢を問わず行えます。中学生・高校生の時期は、ご本人が装置の必要性を理解して主体的に取り組めるという利点もあります。開始時期についてご不安があれば、現在の状態を確認したうえで、選べる方法をご説明いたします。
よくあるご質問
Q. 開咬は自然に治ることはありますか?
指しゃぶりなど明確な癖が原因で、その癖が早い段階でなくなった場合には、成長とともに改善してくるケースもあります。一方で、舌の癖やあごの成長のしかたが関係している場合は、自然な改善が難しいこともあります。どちらに当てはまるかはお口の中を拝見しないと判断できませんので、様子を見るかどうかも含めて一度ご相談ください。
Q. 治療にはどれくらいの期間がかかりますか?
開始時期や原因、選択する方法によって大きく異なります。癖への働きかけが中心となる時期を含めると、経過観察も合わせて年単位でお付き合いいただくことが一般的です。カウンセリングの際に、おおよその見通しと通院のペースをお伝えいたします。
Q. MFTは家でどれくらいやる必要がありますか?
内容によりますが、一日数分程度の練習を毎日続けていただく形が中心です。長時間まとめて行うよりも、短くても毎日続けるほうが効果が出やすいとされています。続け方に悩まれたときは、ご家庭の状況に合わせて内容を調整いたしますので、遠慮なくお知らせください。
Q. 他院で「様子を見ましょう」と言われましたが、心配です。
セカンドオピニオンも歓迎しております。同じ状態でも、着目する点によって考え方が異なることはあります。当院では、なぜ今は経過観察でよいのか、どうなったら治療を検討するのかという判断の根拠をできるだけ具体的にお伝えするようにしています。他院での説明内容も伺ったうえで、ご一緒に整理いたします。
Q. 矯正中にむし歯になりませんか?
装置がつくと歯みがきがしにくくなるため、ケアの難しさは増します。当院は矯正だけでなく、むし歯や歯ぐきの治療も含めて対応しておりますので、矯正の経過を見ながら定期的なチェックとクリーニングを組み合わせ、お口全体を管理していくことができます。
まとめ
子どもの開咬について、押さえておきたい点を整理します。
ひとつめは、開咬は奥歯を噛んでも上下の前歯が触れない噛み合わせで、見た目に目立ちにくいぶん気づかれにくいということです。前歯で噛み切れない、口が開いていることが多いといった様子が、ご家庭で気づけるサインになります。
ふたつめは、原因の多くに指しゃぶりや舌の癖、口呼吸といった日常の習慣が関わっているという点です。あごの成長のしかたが関係していることもあり、まずは何が影響しているのかを見極めることが治療の出発点になります。
みっつめは、治療は装置だけで完結しないということです。MFTで舌や唇の使い方を整えながら、必要に応じてプレオルソ・床矯正・インビザラインファースト・ワイヤー矯正などを組み合わせ、治療後も保定を含めて経過を見ていく流れが基本になります。
よっつめは、相談の目安は前歯が生え変わり始める5〜7歳ごろであるという点です。すぐに治療を始めるためではなく、いつ動くべきかの見通しを持つために、早めのご相談が役立ちます。もちろん、中学生以降でも取り組める方法はあります。効果の現れ方には個人差がありますので、実際の進め方はお子さんの状態に合わせてご提案いたします。
長崎県長与町の渡辺歯科医院では、小児矯正(1期・2期治療)、マウスピース矯正、ワイヤー矯正に対応しており、矯正の無料カウンセリングを行っております。院長はむし歯や歯ぐきの治療を含めた総合的な診療にあたっておりますので、矯正だけを切り離すのではなく、お口全体を見ながらの計画をご提案できます。セカンドオピニオンも歓迎しております。お子さんの前歯の噛み合わせが気になったら、まずはお気軽にご相談ください。